
転職の合間に、南の島へリトリートにやってきた。とはいえ、滞在中にも授業はあるし課題も片付けなければならない。完全なバカンスというわけにはいかないが、出国前にまとめて課題を終わらせておいたおかげで、数日間は自分のためだけに使える時間を確保することができた。
今回は何もしない時間を楽しむぞ、と意気込んでやってきたものの、結局は空いた時間を見つけては観光に出かけてしまうあたり、自分の性分はなかなか変わらない。
それでも、ホテルのプールサイドでのんびりしたり、サンライズを眺めながら海辺を散歩したり、サンセットを見ながらカクテルを飲んだりと、南の島らしい時間を十分に味わうことができた。
前回、転職の合間に旅行へ出たときは、ロンドンの安宿に泊まりながら無料の美術館や博物館を巡るような節約旅行だった。
それに比べると、今回は少しだけ贅沢をした。ちょっといいホテルに泊まり、スパやマッサージを受け、雰囲気の良いレストランに入る。決して豪華な旅ではないけれど、ここ数年の自分を労うには十分だった。
私は昔から努力することは得意だったが、自分を労ることはあまり得意ではなかった。だからこそ、心地よさに時間やお金を使えるようになったことが、今回の旅ではとても嬉しかった。収入が増えたこと以上に、自分のためにお金を使うことを自分に許せるようになったことの方が大きな変化だったように思う。
今回の旅では、バリの人気観光地である、サヌール、ウブド、チャングーという三つのエリアに滞在した。それぞれ全く異なる魅力があり、自分がどんな環境を好み、どんな暮らしに惹かれるのかを考える良い機会になった。この秋から同棲を始める予定なので、住む場所や理想とするライフスタイルを考える上でも、多くのヒントを得ることができた。
年初に「可能性を狭めて生きる」という記事を書いた。二十代から三十代前半にかけては、ひたすら可能性を広げることに力を注いできた。専門職として働きながら学びを続け、新しい環境に飛び込み、自分の世界を少しずつ広げてきた。
けれど三十代後半になった今、感じているのは少し違う。これ以上可能性を広げることよりも、広げた選択肢の中から、自分はどうありたいのかを選び取ることの方が大切になってきた。
もちろん、やろうと思えばまだまだ選択肢を増やすことはできるだろう。でも、これから家族を持てば、自分の時間も、自分のために使えるお金も限られてくる。体力だって永遠ではない。
だから最近は、選択肢を増やすこと以上に、人生を楽しむための余白が欲しいと思うようになった。
仕事や勉強は嫌いではない。むしろ好きな方だと思うし、自分の持てる時間やエネルギーを全部注ぎ込むことにも大きな充実感がある。でも、それだけでは少し味気ない。
もっと人生を楽しむ時間がほしい。生きていることを味わう時間がほしい。

そういう意味では、西洋人は人生の楽しみ方が上手だと思う。普段はしっかり働きながら、休むときはしっかり休む。長期休暇には思い切りバカンスを楽しみ、平日は真面目に働きながらも、週末や夕方以降は家族や友人との時間を大切にする。仕事も大切にするし、人生も大切にする。そんなメリハリのある生き方に、以前よりも強く惹かれるようになった。
仕事もしたい。学び続けたい。起業にも興味がある。
けれど、今の私にとっては、働くこと=人生ではなくなった。
働くこと。それは、あくまで人生を豊かにするための手段だ。
その先には、家族との時間があり、旅先で海を眺めながらのんびり過ごす時間があり、好きな本を読む時間がある。そうした余白も含めて、人生なのだと思う。
帰国したら新しい仕事が始まる。
きっとしばらくは慣れないことだらけで忙しい日々になるだろう。
それでも今回見つけた感覚を忘れずに、自分にとって本当に大切なものを少しずつ選び取っていきたいと思う。
